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Vol.116
31/Mar 2008
 
MacBook Air's message

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mba341_ MacBook Air

EXIF

絞り: f/2.8
シャッター速度 1/500
ISO 125
焦点距離: 85mm
Canon EOS-1D Mark III / EF85mm F1.2L
Eileen GrayデザインのサイドテーブルE-1027の上に載せてみました。後ろにあるのはLe CorbusierデザインのスリングチェアLC-1です。いずれもジェネリック品。朝日がうまく当たるのをまっていたのですが、結局出勤直前になってしまって慌てました。
341_ MacBook Air

柔らかな曲面と、エッジの効いた断端が同居するMacBook Airの筐体デザインは、使用中よりも無造作にテーブルにおいてあるときの方がその薄さを実感するかもしれない。

繊細なデザインから予想されるよりも丈夫な筐体は、バッテリー交換すら否定したデザインの産物なのかもしれない。

ほかにも削除された機能、ポートは、安易なMacBookからの乗り換えを拒絶している。MacBook Proユーザーはその価格に見合う性能をカタログから読み取ろうと必死になるが、価値を見いだせないばかりか、欠点ばかりが目につくかもしれない。

FireWireをなくした理由は単純ではないだろう。だからこそ残ったものからのメッセージに耳を傾ける必要がある。

342_MacBook Air logic board and Heat spreader
342_MacBook Air logic board and Heat spreader

Intel自体が推奨しApple TVでも採用されている高密度配線技術(HDI)と、小型チップセットMerom-SFFで構成された基板。ただし低電圧版Core 2 Duoは最新のpenrynではなくmeromであるTDP 20WのP7700だ。

基盤の小ささにも目を奪われるが、熱源となるCPUとNorth bridgeだけではなくメモリ付近まで大きく回り込んだ冷却機構に強いメッセージを感じる。

MacBook Airを気持ちよく使うには、薄さ、軽さだけではなく、熱処理性能も問われるのだ。

343_Power Book logic boards and Small Form Factor

343_Power Book logic boards and Small Form Factor

PowerPC時代のPowerBookの各サイズの基板とMacBook Airのそれを比較する。North BridgeにGPUが内蔵されているため主要チップセットが少ないだけでなく、実装密度が高いこともわかる。

本来Montevina Small Form Factorと呼ばれる45nm Core 2 Duoで実現される小型チップを前だおしで使ったことになる。これは従来35mm角であったmeromをpenryn SFFと同じ22mm角に縮小、Cantiga SFFは25×27mmへ、I/Oも31mm角から16mm角へ小型化した 。全体の面積は3342sq.mmから1415sq.mmと小型化されている。

LEDバックライト化やCPU周りの電源供給回路の小型化も面積の縮小に一役買っているが、こうしてみると、DVIやUSB、FireWire、Eathernetといった端子が基板の高さに大きく影響していたことがわかる。

賛否はあるものの、こうした外部インターフェースを削除したことは確かに薄型化に寄与しているといえるだろう。

344_ slit at the lower case

CPUとGPUが内蔵されたCantiga(North bridge)だけではなく、2ギガバイトのDRAMまで積極的に冷却する仕組みのおかげで、予想通り筐体裏側は不快なあつさは無い。MacBook ProはTDPが35WのCore 2 Duoを想定して設計されている。最新のpenrynも、当初TDPは29Wとされていたが、チップ内部のホットスポットの抑制の成果か、35Wまで高められ、その分性能向上されたといえる。

MacBook Airの場合、CPUのTDPは20Wであるとされている。比較的低い温度から積極的に空冷されるため、SSD側のほうが底面温度が高い。

SLIT344_ slit at the lower case

EXIF

絞り: f/2.4
シャッター速度 1/90
ISO 100
焦点距離: 5.9mm
GR DIGITAL 2
事務机の上において普通に撮影しています。GR DIGITAL 2はマクロに強く、小型なところが気に入っています。ただし、最近手に入れたSIGMA DP1はサイズが同じぐらいなのに、すごくシャープな写真がとれるので、めっきり出番が減りました。

MacBook Airは筐体デザインが久しぶりにかわったモデルです。みるものに強烈な印象をあたえるその薄さと引き換えに削除された機能は、「引き算の美学」という言葉で表現されるように、ほんとうにそれほど高いメッセージ性を持っているのでしょうか。

光学ディスクはビデオの視聴やアプリケーションのインストールに使われます。MacBook Airが唯一のMacという場合をのぞき、常時DVDドライブを持ち運ぶ必要性はないでしょう。コンテンツ保護のためネット越しに接続されたDVDビデオはみることは出来ません。どうしてもという場合、専用DVDドライブを購入すれば解決します。事実、最初にクリーンインストールしたとき以外、専用ドライブを使うことはありませんでした。ステレオスピーカーやEthernet端子も代替があります。

では、FireWireはどうでしょう。システムリカバリーや環境移行時など特殊な状況でFireWireが無いことは大きなストレスとなりました。ターゲットディスクモードが使用できないため、システム環境移行にLAN環境で情報を送出する設定が追加されましたが、移行に時間がかかります。

ただし、SSDが64GBしか無いため、単純な環境移行は出来ませんでした。環境がバックアップされたTimeMachineをUSB接続すると高速に移行可能ですが、よく使うアプリケーションだけをインストールしても、残り容量が逼迫し最終的には.Mac Syncの最低限の設定のみ引き継ぐだけで使うことが一番使いやすいと考えています。

リチュームポリマー電池は筐体の薄型化に大きく寄与していることは疑う余地はありません。専用アダプタを小型化するとともに、ユーザーによる交換を否定、剛性と軽量化を手に入れました。予備バッテリーを持ち運ぶことによるシステム全体の重量増を嫌ったというべきかもしれません。それでも電池残量を気にしなくてすむほどの容量はありません。

うしたプロファイルを眺め、MacBook Airはどういう場面で使うべきなのでしょうか。MacBook Proとくに17inchモデルは十分な性能、広い画面と高い解像度を備えMac Proの圧倒的性能が必要でなければ、代替として不満はなく、無線LANと組み合わせれば、ワークエリアが広がり自分の時間を有効に使うことができる情報ツールになります。ただし、大きく重いため明確な目的が無ければ気軽に持ち運ぶわけにはいかないのも確かです。内蔵されるストレージも大容量で盗難されたときの知的財産の喪失も大きいものです。

MacBook Airにはセキュリティワイヤーを接続する場所がありません。なくなった機能の中でもっとも安価ですが、もっともメッセージ性の高い「引き算」ではないでしょうか。ようするに「肌身離さず持ち歩け」というメッセージです。いつも鞄の中に放り込んでおき、手帳がわりにメモをとり、資料を開き、話している相手にマンツーマンでプレゼンするときのツール。プロジェクターは要りません、パンフレットを見せるように気軽に提示するのです。 液晶パネルがあまり開かないのが気になるかもしれません。いえ、本体が軽く剛性が高いのですから、本体をつまんで見やすいように傾ければよいのです。

Spacesでkeynoteを常用以外のspaceに割り当てておけば、人に見せるときに裏方を見せることもないでしょう。 スクリーンセーバーからの復帰にパスワードをかけずに使うと本当に快適です。液晶を閉じて間髪を入れずに鞄にしまう。そうした場合でもSSDならストレスがありません。もう少し薄く、もう少し軽くもう少し長くバッテリーがもてばそんな使い方もあるのではないでしょうか。ちょっと鞄から取り出して、アイデアを書き留める。しばらく画面を覗き込んで考えを整理する。バックグラウンドで重い処理をガリガリ行う、そうした用途には向きませんし大容量のデータのハンドリングには向いていません。でもアイデアノートとしてのメモ、何かを伝えるための表現ツール、今まで理由がなければ持ち運ばなかったノートパソコンを、理由が無くても携帯できるようにした意味で、「空気」になれたのかもしれません。(MacBook Airの妥協点に続く)

 

 

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Written/Edited by Y.Yamamoto M.D.
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