体感速度というものは大変曖昧なものです。特に画面描画のきびきびした感じは、演算などの基本性能以上に強く印象にのこるのではないでしょうか。
PowerBook G4は2回のマイナーチェンジの度にグラフィックサブシステムの改良が行われています。最初はATI RAGE mobility 128でしたが、Gigabit EthernetではATI Mobility RADEONが、さらにDVIにはATI Mobility RADEON 7500が搭載されています。
237_ Graphic performance chartはGigabit Ethernet 667とPowerBook G4 DVI 800のグラフィックサブシステムのベンチマーク結果です。
注目すべき点は、DVIの省電力モードと通常モードで結果に大きな隔たりがあったCopybit - Large copyです。small copy、すなわち小さなピクセルデータの転送には、両モードで変化は僅かでした。この結果をどのように解釈すべきでしょうか。私は次のように考えました。描画する画像データの大きさが、L3キャッシュに格納できる場合、CPUからのデータの流れはGPUにスムーズに到達出来るのに対し、キャッシュ容量を超え、メインメモリへのアクセスが必要な場合はパフォーマンスが発揮できないのではないかと仮定しました。
|
そこで2×AGPのPowerBook G4 Titanium 500を含め、どこにボトルネックがあるのか、比較検討することにしました。
238_ Bottleneck in the pathway of copybit benchmarkは、二つの経路別にその結果を示した物です。
PowerBook G4 Titaniumは、1メガバイトのL2キャッシュをオフにしても、速度に大きな変化はありません。飽和点が RAGE Mobility 128もしくは2×AGPにあると考えました。
4×AGPを採用しているはずのPowerBook G4 Gigabit Ethernetが、CPU速度の違う2機種でほとんど同じ121メガバイト/秒で頭打ちになっているのに対し、PowerBook G4 DVIが倍の246メガバイト/秒を実現しているのは、ボトルネックがAGP側にあるのではなく、MPXバスにメインメモリとAGPへのアクセス要求が集中するために起こると考えてみました。
North BridgeであるUni-North ICとCPUを接続するのは133MHz、64ビットであり、この部分がボトルネックになっているのではないでしょうか。
|
PCの世界ではi850EやSiS645DXといったNorth Bridgeが、Pentium4との組み合わせで533MHz相当のFSBを実現していることと比較すると、MacintoshのFSBはその4分の1です。DDR SDRAMの採用も239_ Xserveでやっと実現しました。FSBは従来と変わりがないと思いますが、server用途ではDMAの活躍の場も増え、FSBが遅いままでも、North Bridge内部のスループットが向上した効果はあると思います。
ノートPCは、ハイエンドの主流がDDRメモリに移行し、845MPのFSBは、PowerBook G4 DVIのL3キャッシュバスと同じ400MHzです。
それでもPowerBook G4 DVIは、全体のバランスという点で及第点をあげることが出来るかもしれません。強烈なスペックのノートPCも、熱設計消費電力が35W、水冷の話まで飛びだし、バッテリー駆動時の性能低下は避けられないようです。
240_ PowerBook G4 Battery Life にはPowerBook G4のバッテリー持続時間について、二つのパターンで計測、比較検討してみました。負荷の低い想定で、DVIは一度もファンが回ることはありませんでした。 |