内部を観察してみることにしましょう。282_ Internal photograph of PowerBook G4 1GHzに裏蓋を開けた写真を示しましたが、大きな変化はありません。冷却ファン周りの強化が唯一目につくかもしれません。iBookと同様、PowerBook にもブロアーが使われるようになりました。ブロアーは噴出口付近の抵抗が大きい場合に有効で、デザインを優先した改良といるかもしれません。手をかざすとはっきりと熱風を感じることができますが、回転音は静かです。
281_ Side Blower and Heat-pipeは本体右側に位置します。これまでのPowerBook G4は、ヒートパイプを、フレーム部分へ熱を放散すために利用してきました。PowerBook G4 1GHzは、5本のうちの一本に初めて冷却用フィンが付属し、ブロアーによる強制冷却を行っています。冷却ファンはPowerBook G3 Series 1998からPowerBook G4 DVIまでは、放射冷却を補う立場でしたが、PowerBook G4 1GHzでは、冷却に積極的に利用されるようになったと考えるべきでしょう。ポリシーの変化の背景には何があるのでしょうか。
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当初500MHzでリリースされた初代PowerBook G4 Titaniumは1年と11ヶ月で倍の1GHzを実現しました。コンピュータで消費された電力はそのほとんどすべてが熱に変化します。たとえばCPUの消費電力は、「供給される電圧の二乗×クロック数×トランジスタのキャパシタンス+リーク電流」で大まかに表すことができます。回路の小型化と銅配線、SOIはキャパシタンスの低下とより低い電圧でも動作可能な性能をもたらしました。
より高機能な回路を組み込むためには筐体側の性能も重要です。ノート型PCの性能はその冷却能力が大きく左右しているともいわれます。
さて、CPUを選択するとき最大消費電力を想定し、冷却能力とのバランスで熱設計を行う必要があります。確かに、モトローラの資料にはTypicalとMaxという消費電力は記載されていますが、最大省電力を決めることは意外と難しい作業なのです。モトローラがFAQの中でもふれているように、このMaxはハードウェア構成やソフトウェアで大きく変化す
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るものであり、モトローラが示しているのはAltivecをフルに稼働した時の一つの目安にすぎないということです。たとえば、パイプラインストールを減らすためにBusの速度をあげたり、L3キャッシュの使用頻度を向上させるよう、容量やアプリケーションの最適化を行えば、最大消費電力は、より高くなっていくでしょう。283_ L3 cache, DDR SDRAM K7D403671B-HC30は、高速になったL3キャッシュを示しましたが、容量は1メガバイトに止まっています。L3キャッシュ容量を増やすことで、G4のピーク性能が上がった結果、発熱、消費電力の増加を考慮した上での妥協でしょう。
0.13μmのHiPerMOS 7、512KバイトのL2キャッシュと1.8GHzまでを視野に入れたPPC 7457や、Rapid IOとDDRを実現し2GHzオーバーを目標とする7457-RM、Intel的アプローチでRISCアークテクチャを見直したPowerPC 970など、高性能チップが続々名乗りを上げています。デザインを重視しつつ、PowerBookの冷却性能も次世代を目指す時期がきたのかもしれません。
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