MacOS X 10.4の販売開始前夜、Tiger搭載の新PowerMac G5の発表がありました。クロックアップと価格改定の平凡で、予想された改訂なのでしょうか。
330_ PowerMac G5 block diagramにアーキテクチャブロック図を示しますが、大きな変化はありません。PowerPC 970FXとUni North 3Hの組み合わせは全体的なクロックアップが施され最高2.7MHzとなり、プロセッサバスも最高1.35MHzへ引き上げられています。二層DVD書き込み対応のDVD+Rドライブの採用が行われています。
一方Cinema HD 30inchディスプレイを使用するには、安価なRadeon 9650あるいはGeForce 6800 Ultra DLLの二者択一となりました。しかしこの二つの性能差は大きく、またRadeon 9650は最新のGPUとは言えません。ただ、MacOS XのQuartz graphicsで利用するうえでは、その性能差が出ないと言う側面もあります。
それではTigerで採用されたCore ImageやCore Videoといった新しい機能を快適に利用できるのでしょうか。GPUの機能を最大限に引き出し、圧倒的な性能をもたらすと言うこれらの新機能を使用する上で、AGP×8というアーキテクチャに問題は無いのでしょうか。
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Core Imageは特殊なGPUのシェーダープログラムをOS自体が持つことで、性能向上めまぐるしいGPUのパワーを簡単に利用するものであると、とらえられてきました。そうすると、CPUからGPUの下りデータだけではなく、GPUからメモリあるいはCPUへの上りデータの帯域も十分に確保する必要があります。GPUの有効利用ということではQuartz ExtremeとCore Imageは同じだと、とらえても良いかもしれませんが、アーキテクチャ的には正反対の思想があります。
Quartz Extremeは、フロントサイドバスにボトルネックのあるG4アーキテクチャでは、GPU内部での処理を増やすことで、この弱点を上手にカバーしました。ボトルネックの解消されたG5アーキテクチャでGPUの本当のパワーを利用するのが、Core ImageでありCore Videoなのでしょう。
Core Imageは画像処理に32bit浮動小数点演算を使用します。現在GPUで32bit浮動小数点演算をPixel shaderでも使用できるのはnVidiaだけであり、ATiは最新のX800シリーズでも24bit演算にとどめています。ATiは現在のゲーム市場での演算精度は24bitで十分であると判断し、分岐処理を含む複雑な演算は時期尚早であるとしています。これに対しnVidiaはいち早く32bit浮動小数点演算を取り入れた反面、大量のトランジスタが必要で、発熱の面から
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も不利でした。しかし、頂点演算回路からピクセルシェーダーの結果を参照して処理が行われるピクセルシェーダー3.0を搭載したGeForce 6800にとって、Vertex shaderとPixcel shaderに精度の差があってはなりません。この参照がないピクシェルシェーダー2.1を搭載するRadeon X850ではあまり問題にならないのかもしれませんが、Core ImageなどGPUからCPUへの結果の送出がある場合、この精度の違いは大問題です。
それではCore ImageにとってGeForce 6800 Ultraは必須なのでしょうか。例えば1080pのHD映像は約200万画素あり、Core Imageが言うところの32bit浮動小数点演算を取り入れると1フレームあたり32Mバイトにもなります。一秒間が60フレームとすると1.9Gバイト/秒ものスループットが必要となり、双方向あわせて最大2.1Gバイト/秒のAGP×8の規格そのものを軽く凌駕してしまいます。これを解消するには片側4Gバイト/秒を実現するPCI Express×16をUni Northがサポートする必要が出てきます。
こうして考えると、Core Imageをフルで使用できるハードウェアは存在しないのではないかと思えるかもしれません。しかしそれは誤りです。Core ImageはGPUの機能を引き出すためにもう一つ大切な側面を持っているのです。それはGPUを使わないという選択です。
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GPUを使用するためにGPUを使わない?逆説めいていてわかり難いかもしれません。Core Imageのもう一つの重要な機能に眼を向ける必要あります。Core ImageはGPUの持つ機能を、shaderプログラムの知識無くして利用できるだけではなく、ハードウェアの違いを吸収し、最適な手法を提供する方法でもあります。だからこそOSが内包しているのです。画像処理にGPUの利用が適さない場合、G4やG5のAlitivec演算を使用して、同等の機能を提供します。使用者はハードウェアの違いに左右されずCore Imageを利用できるのです。このことは、将来GPUの性能が向上したとき、あるいはアーキテクチャ自体が更新されたときも、大きな変更無く最新のハードウェアの恩恵にあずかれることを意味しています。
ハードウェアの開発同様、ソフトウェアの開発には多大な時間と労力が必要です。例えばGPUなどのハードウェアと同時にソフトウェアの開発が行えるのは、ごく一握りの有力ゲームベンダーに限られるでしょう。ハードウェアの開発を待たずにソフトウェアを開発し、最新のハードウェアの恩恵を即日受けることができる、それがCore ImageでありCore Videoなのです。古いアーキテクチャでも安心して使用できるだけでなく、投資した最新のハードウェアを即、実践投入できるでしょう。
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最初の「Core ImageやCore Videoといった新しい機能を快適に利用できるのか」という問いに対しての回答は、「はい」であって「いいえ」でもあります。ただ、個人的には、Core Imageが初めて本格的に利用されるだろうmotion2をGeForce 6800 Ultraで試してみたいと思いますが。
2005年7月21日
Apple StoreではnVIDEA GeForce 6800 Ultra DDLの選択は出来なくなりました。nVIDIA GeFoce 6800 GT DDL単体の選択は可能です。Cinema HD 30inchを同時に2枚使用する場合は6800 GT DDLの選択が唯一になります。GTとUltraの違いはGPUの動作クロック設定で、Ultraが優れていました。
30inchディスプレイを同時に2枚使用する予定がなければ、BTO選択でRadon X850XTが選べます。性能的にも優れており価格も類似すること、また消費電力の面でも有利です。9650との性能差は大きく、ハイエンドを求める場合はX850XTとなります。
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Apple StoreではBTOでグラフィックカードを選択できます。また、TigerではFAX機能が向上していますが、modemがBTOオプションになっていることに注意してください。
nVIDIA GeForce 6800 Ultra DDL グラフィックカードは単体でも68040円で販売されていました。ATi 9650と比較すると性能は優れています。また30 inch Cinema Displayを二つ接続するためには必ず選択する必要がありました。
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