2003年第5回マック系大忘年会のビンゴ大会でラトックシステム社提供のREX-Link1をありがたく頂戴しました。さて、忘年会の賞品には「宿題」があります。使用レポートを書かなくてはならないのですが、少し困ってしまいました。というのは、USBオーディオを無線転送するという明確な目的と、シンプルな製品構成のため、何か工夫するとか、苦労したとか努力が必要ないからです。
それならば、音質はいかがなものかと、問われるでしょう。しかし、音質ほど主観的なものはなく、表現が大変難しい、さらにいえば音源自体がMP3などで圧縮されていて、比較検討するためのリファレンスに欠けるからです。そこで、REX-Link1を評価する前に、リファレンス機器をそろえる必要がありました。
PowerBook G4 800 DVIから、Audio回路はSnapper Audioとなり、デジタルフィルター、デジタルミキサーなど音声回路のデジタル化が進み、最新のPowerBook 15inch fw800
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は、44.1kHz、24bit処理へとPowerBook本体の音質が向上しています。ただ、最終的にはオーソドックスなアナログアンプを採用し、電源回路もロジックと共通で、クリーンな音声を取り出すには、デジタル出力が必要でした。非圧縮ソースとしてAIFFファイル、5.1chソースとしてDVDの「T3」を、インターフェースにはM-AUDIOのsonica、デジタルサラウンドプロセッサアンプにpioneerのVSA-D7、スピーカーにはBOSEのAM-10を使用しました。他にも光デジタルセレクタを購入し、REX-Link1の音質を検討してみることにしました。
BOSEのAM-10と5.1chサラウンドプロセッサの接続はやや特殊なので補足いたします。サラウンドプロセッサの5.1ch音声を一旦5chにミックスしています。すべてのチャンネルに均等配分された低音成分は、AM-10側のアナログ回路で分離され、スーパーウーハーをドライブする仕組みになっています。またスピーカー位置はリアとセンターが目線よりも少し上、左右のメインスピーカーは目線よりも下で、高低差は50cm〜70cmあります。
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リスニングポイントはすべてのスピーカーのほぼ中央で、スピーカーのディレイもすべて設定済みです。いずれも、TruSurrund TXの利点であるスイートスポットの広さを相殺する設定といえるでしょう。
リファレンスとしたsonicaの音声は、エフェクトなしでは、クリアで自然です。音声は前に寄り、目線より少し低い位置に集まる感じです。音楽の場合はそれでよいのですが、DVDソフトではパンチに欠け、臨場感がありません。
TruSurrund TXをアクティブにすると、音が広がります。音楽ソフトをcinema modeで聴くと、楽器が前方に固まって不自然ですが、Music modeにすれば自然です。特徴として、縦方向の位置補正が感じられ、音が目線の高さに移動します。ちょうど楽器の間ににまぎれてリスニングしているような感じです。DVDソフトでは、迫力が少し出て、左右140度程度まで音が広がります。台詞は明瞭ですが、音源の定位はもっさりしていて、はっきりしません。
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TruBassは、スーパーウーハーなど低音用スピーカーがある場合でも、低音がしっかり聞こえて迫力が増します。しかし、普通の音声が引いてしまう感じがするので、使用するか迷うかもしれません。低音成分を増すのではなく、聞こえやすくする技術なので、ヘッドホン使用時には有効でしょう。
TruSurrund TXをすべてオフにしてS/PDIF経由の信号をデジタルサラウンドプロセッサ側のドルビープロロジックデコーダーで処理をさせました。音の広がりはTruSurrund TXよりも広く、200度程度まで広がりますが、サラウンド部分の定位はTruSurrundと同じ程度ではっきりしません。音楽ソフトだと、頭の中で音が鳴り響く感じがして、ヘッドホンをしているような感じがします。
DVDプレーヤを使ってデジタル出力を行い、デジタルサウンドプロセッサ側でAC-3音声を5chに分解した場合は、音はクリアで
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定位がはっきりしています。サラウンド部分の粒子が細かくなることで台詞も際立ちます。PowerBookでDVDを視聴していても、大画面でみているような錯覚さえおこしてしまいました。
REX-Link1を使い、デジタル無線転送し、S/PDIFを使ってデジタルサラウンドプロセッサに入力した場合、sonicaの非圧縮音声と比較しても大きな差は認められませんでした。よく聞けば透明感が違うと予想したのですが、全体に旧式でチープなモニター環境では差を見つけることはできませんでした。これはドルブープロロジック処理を行ったときも、予想に反して特に問題は認められません。この環境では無線伝送のためにSubband codecで圧縮した影響が出なかったといえます。
もちろん、AC-3出力と比較してしまうと、色あせてしまいますが、電源以外を無線化している環境で、音声のみ太いアナログケーブルを用意したり、
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USBケーブルを引き回したりしなくてすむというメリットは他に代え難いものです。FM伝送やアナログ接続のs/n比の低さに辟易した経験のあるユーザーなら、無音時に、まったくノイズのないUSBオーディオ無線デジタル伝送システムに興味を持つに違いありません。そうした意味では、他に選択肢が少なく、ユニークな商品といえます。
有線でもよいというユーザーには安価なM-AUDIO sonicaをお薦めします。TruSurrund TXは手軽にサラウンドを味わえるでしょう、また、デジタルサラウンドプロセッサやスピーカーに投資すれば、AC-3やDTSの再生が可能です。
近い将来PowerBookにも音声光入出力が装備され、bluetooth audioデバイスが広く選べるようになるでしょう。それまでは、こうしたデジタル音声インターフェースがPowerBookの新しい利用方法を切り開くかもしれません。
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