前川氏は本日、APM Tuner (旧ATA Test)ver1.0a2をリリースしました。APM Tunerを使用した感想が沢山寄せられています。いくつか御紹介しましょう。
PowerBook G3 400/14と東芝MK1814 GAVを組み合わせている山本氏は、APM Tunerでのコントロールが可能で、動作が「サクサク」するようになったと感想を述べられています。
この東芝のMK1x14シリーズはディスクキャッシュをIBM Travelstarの倍の1Mbyte搭載し、基本性能も優れているにも係わらず、Travelstarに比べてアクセスに一瞬ためらいがあると感じるユーザーが多くいました*1。IBMの023_Adaptive Battery Life Expanderが省電力制御にパターン認識と学習能力を取り入れ、東芝よりも一枚上手なのでしょう。
APM Tunerはこの省電力制御パラメータを変更するアプリケーションです。この恩恵は最新のPowerBook (FireWire)と東芝のMK1x14シリーズの組み合わせに顕著で、例えばPowerBook 400/14にMK1214 GAPを搭載したJay氏は、動作の遅れが標準のIBM製よりも気になっていたものが解消したと報告、
|
PowerBook 500/14に最初から搭載されていたMK6014MAPについて、日本語入力時に僅かならが引っかかりに気付いていたkoba氏は、APM Tunerの使用で全く消失したとも伝えています。ただし、MK6014MAPについては速度的に満足している方もいてfurusato氏によると、APM Tunerの影響は体感できなかったとも言われています。
DVD視聴中の不愉快な画面の乱れが消失したと報告したのは、PowerBook 500/14にMK1214GAPが組み込まれていた「いっちん」氏です。ハードディスクがstandbyモードから復帰するのに2秒かかり、PowerBookのI/Oを占有することでMPEG2デコードが停止してしまうのが無くなるからでしょう。
APM Tunerの恩恵はPowerBookだけにあるものでは有りません。iBookにMK1214 GAPを組み込んでいるyuji.i氏はかなりの速度向上を感じたそうです。
ひとえ氏は最初MK1214GAPの組み込まれていたPowerBook 500/14を使用していたそうです。初期不良交換でIBM Travelstar 12GNが組み込まれたPowerBookに交換し、動作音(カリカリ音)がうるさく感じたそうです。そこでATA Test1.0d3を使って、速度向上に満足していたところ、アプリケーションフリーズをきっかけに、ハードディスクからまるでCD-ROMが回っているような音が |
しだしたというのです。音以外に問題出なかったそうですが、最終的には交換修理となったそうです。
これは何が考えられるのでしょうか。まずAPM Tunerの動作原理を復習する事にしましょう。023_Adaptive Battery Life Expanderに示した各モードから実際のアクセスが再開するまで長いときで約2秒、Low power Idleからは400ms必要です。このLow power Idleからの復帰時に不愉快な動作待ちが感じられ、その切り替タイミングを制御するのがAPM Tunerです*2。
ただここで注意すべきはLow power Idle時のヘッドの位置です。022_Load/unload mechanismsはIBMだけではなく最近の大容量ハードディスクには殆ど搭載されているシステムです。プラターの表面が非常に平滑になり、その表面全体にデータが書き込まれるようになり、ヘッドとプラターの接着を防ぐため、回転低下時にヘッドはヘッド格納場所に待避しています。このとき「カチャリ」という音がします。専用の格納場所にヘッドが有ることで、モバイル機に重要な「対ショック性能」が向上していることも見逃すべきではないでしょう*3*4。
021_Load/unload technologyにはその実物の写真を示しました。鏡面の様に輝き、一様なプラターの脇にヘッドを格納するLoad/unloadユニットが整然と並んで
|
います。
ひとえ氏が体験したハードディスクのトラブルがヘッド格納の抑制に関連する可能性は高いと言わざるおえないでしょう。
そこで私はIBM Travelstar 6GTをAPM TunerでAPM値を最大、すなわち最もヘッドの格納が行われない設定にして、意図的にアプリケーションをフリーズさせました。その結果は、特に異常が発生することなく、再現実験は不発に終わりました。APM値が最大のときのフリーズが致命的なトラブルを必ず発生させると言うことではなさそうです。
対ショック性能の低下はモバイルコンピュータでは無視できない事柄でしょう。APM Tunerは多くのユーザーの声が反映され、着実に進化を遂げています。
例えばバッテリ駆動時とAC駆動時の設定を使い分けることが出来ます。バックグラウンドで動かさなくてならないという制約があるものの、AC電源を取り外した瞬間
|
にAPMの値を設定し直すことすらできるのです。
さて最適な値はあるのでしょうか。ヒントになる投稿がありました。オオタカ氏はPowerBook G3 266/14と東芝MK1814 GAVの組み合わせでAPM値を180以下に落とすとことえりの変換時にまたつきが出始め、200に設定して使用しているそうです。またSoundAppでMP3を再生するときクラシックのアルバムなど演奏が楽章ごと連続しているのに、ファイルが分断されていることもあってか、楽章間の大切な余韻の部分で「カリカリカァーンンン」と途切れていたのが解消したそうです。die-junction温度も連続動作時でも87度止まりで、以前よりも飛び抜けて高いと言うことはないそうです。
APM値を大きくして、省電力性を犠牲にすれば、発熱も大きくなります。しかし最近の銅配線のCPUを搭載するPowerBookと比較すると87度という数字はべらぼうにも思えますが*5、PowerBook G3 266/14の数字としては上限程度でしょう*6。
もん氏によると、富士通 MHK2120ATはコントロール出来なかったそうです。すべてのハードディスクで活用できるわけではなく、使い方も各人で最適な数字を探さなくてはならないという意味では、すこし敷居が高いのかも知れません。しかし、自分の道具としてのコンピュータをいかに自分の手に馴染ませるか、設定 |
を追い込んでいく時の楽しみもあるでしょう。
燃料を薄くしてノッキングが出るぎりぎりまで追い込んだエンジンはとても乾いた排気音と、フライホイールを交換したかのようなレスポンス、恐怖を感じるほどの加速を手に入れます。エンジンブローを恐れていてはチューニングは出来ないのです。
謝辞
プログラム開発者の前川氏と、情報提供者のみなさまに感謝いたします。
- *1MK1214GAPが起動ディスクに出来ないのはなぜ?
- *2Adaptive Power Management for Mobile Hard Drives(Adaptive Life Expander TM)(PDF)
- *3IBM hard disk drive load/unload technology
- *4ハードディスクからの異音
- *5PowerBook (FireWire)のDie-Junction温度について
- *6PowerPC750を搭載するPowerBookのDie-junction温度一覧
|