Macintosh
MacBook Airからのメッセージ
MacBook Air's message
柔らかな曲面と、エッジの効いた断端が同居するMacBook Airの筐体デザインは、使用中よりも無造作にテーブルにおいてあるときの方がその薄さを実感するかもしれない。
繊細なデザインから予想されるよりも丈夫な筐体は、バッテリー交換すら否定したデザインの産物なのかもしれない。
ほかにも削除された機能、ポートは、安易なMacBookからの乗り換えを拒絶している。MacBook Proユーザーはその価格に見合う性能をカタログから読み取ろうと必死になるが、価値を見いだせないばかりか、欠点ばかりが目につくかもしれない。
FireWireをなくした理由は単純ではないだろう。だからこそ残ったものからのメッセージに耳を傾ける必要がある。
Intel自体が推奨しApple TVでも採用されている高密度配線技術(HDI)と、小型チップセットMerom-SFFで構成された基板。ただし低電圧版Core 2 Duoは最新のpenrynではなくmeromであるTDP 20WのP7700だ。
Intel自体が推奨しApple TVでも採用されている高密度配線技術(HDI)と、小型チップセットMerom-SFFで構成された基板。ただし低電圧版Core 2 Duoは最新のpenrynではなくmeromであるTDP 20WのP7700だ。
基盤の小ささにも目を奪われるが、熱源となるCPUとNorth bridgeだけではなくメモリ付近まで大きく回り込んだ冷却機構に強いメッセージを感じる。
MacBook Airを気持ちよく使うには、薄さ、軽さだけではなく、熱処理性能も問われるのだ。
PowerPC時代のPowerBookの各サイズの基板とMacBook Airのそれを比較する。North BridgeにGPUが内蔵されているため主要チップセットが少ないだけでなく、実装密度が高いこともわかる。
本来Montevina Small Form Factorと呼ばれる45nm Core 2 Duoで実現される小型チップを前だおしで使ったことになる。これは従来35mm角であったmeromをpenryn SFFと同じ22mm角に縮小、Cantiga SFFは25×27mmへ、I/Oも31mm角から16mm角へ小型化した 。全体の面積は3342sq.mmから1415sq.mmと小型化されている。
LEDバックライト化やCPU周りの電源供給回路の小型化も面積の縮小に一役買っているが、こうしてみると、DVIやUSB、FireWire、Eathernetといった端子が基板の高さに大きく影響していたことがわかる。
賛否はあるものの、こうした外部インターフェースを削除したことは確かに薄型化に寄与しているといえるだろう。
CPUとGPUが内蔵されたCantiga(North bridge)だけではなく、2ギガバイトのDRAMまで積極的に冷却する仕組みのおかげで、予想通り筐体裏側は不快なあつさは無い。MacBook ProはTDPが35WのCore 2 Duoを想定して設計されている。最新のpenrynも、当初TDPは29Wとされていたが、チップ内部のホットスポットの抑制の成果か、35Wまで高められ、その分性能向上されたといえる。
MacBook Airの場合、CPUのTDPは20Wであるとされている。比較的低い温度から積極的に空冷されるため、SSD側のほうが底面温度が高い。
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MacBook Airは筐体デザインが久しぶりにかわったモデルだ。みるものに強烈な印象をあたえるその薄さと引き換えに削除された機能は、「引き算の美学」という言葉で表現されるように、ほんとうにそれほど高いメッセージ性を持っているのだろうか。
光学ディスクはビデオの視聴やアプリケーションのインストールに使われる。MacBook Airが唯一のMacという場合をのぞき、常時DVDドライブを持ち運ぶ必要性はないだろう。コンテンツ保護のためネット越しに接続されたDVDビデオはみることは出来ない。どうしてもという場合は、専用DVDドライブを購入すれば解決する。事実、最初にクリーンインストールするとき以外、専用ドライブはしまい込んでしまった。ステレオスピーカーやEthernet端子も代替がある。
では、FireWireはどうだろう。システムリカバリーや環境移行時など特殊な状況でFireWireが無いことは大きなストレスになった。ターゲットディスクモードが使用できないため、システム環境移行にLAN環境で情報を送出する設定が追加されたが、移行には堪え難い時間がかかった。
SSDが64GBしか無いため、単純な環境移行は出来ない。環境がバックアップされたTimeMachineをUSB接続すると高速に移行可能だが、よく使うアプリケーションだけをインストールしても、残り容量が逼迫し最終的には.Mac Syncの最低限の設定のみ引き継ぐだけで使うことが一番使いやすいと、考えが至った。
リチュームポリマー電池は筐体の薄型化に大きく寄与していることは疑う余地はない。専用アダプタを小型化するとともに、ユーザーによる交換を否定し、かわりに剛性と軽量化を手に入れた。予備バッテリーを持ち運ぶことによるシステム全体の重量増はMacの美学にあわないのだろう。ただ、電池の残り容量を気にしなくなるほど、十分に長持ちしないの確かだ。
こうしたプロファイルをもつMacBook Airを、どういう場面で使うべきなのか。MacBook Proとくに17inchモデルは十分な性能、広い画面と高い解像度を持つ。Mac Proの圧倒的性能が必要でなければ不満はなく、無線LANと組み合わせれば、ワークエリアが広がり自分の時間を有効に使うことができる情報ツールになる。でも、大きく重いため明確な目的が無ければ気軽に持ち運ぶわけにはいかないだろう。内蔵されるストレージも大容量で盗難されたときのことを思うと、恐ろしい。
MacBook Airにはセキュリティワイヤーを接続する場所がない。なくなった機能の中でもっとも安価だろうが、もっともメッセージ性の高い「引き算」ではないのか。ようするに「肌身離さず持ち歩け」というメッセージなのだろう。いつも鞄の中に放り込んでおき、手帳がわりにメモをとり、資料を開き、話している相手にマンツーマンでプレゼンするときのツール。プロジェクターは要らない、パンフレットを見せるように気軽に見せればいい。 液晶パネルがあまり開かないのが気になるかもしれない。いや、本体が軽く剛性が高いのだから、本体をつまんで見やすいように傾ければよいのだ。
Spacesでkeynoteを常用以外の画面に割り当てておけば、人に見せるときに裏方を見せることもないだろう。 スクリーンセーバーからの復帰にパスワードをかけずに使うと快適だ。液晶を閉じて間髪を入れずに鞄にしまう。そうした場合でもSSDなら心配は要らない。もう少し薄く、もう少し軽くもう少し長くバッテリーがもてばそんな使い方もありだろう。
ちょっと鞄から取り出して、アイデアを書き留める。しばらく画面を覗き込んで考えを整理する。バックグラウンドで重い処理をガリガリ行う、そうした用途には向かない。大容量のデータのハンドリングもさけるべきだろう。でもアイデアノートとしてのメモ、何かを伝えるための表現ツール、今まで理由がなければ持ち運ばなかったノートパソコンを、理由が無くても携帯できるようにした意味で、「空気」になれたのかもしれない。