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13/Feb.

SYMMETREL

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シンメトレル(SYMMETREL ノバルティス ファーマ(株))がA型インフルエンザウイルス感染症に対し使用できるようになったのが平成10年11月27日ですから(1、2ヶ月半経過したことになります。

日本では長らく「脳梗塞に伴う意欲・自発性の低下の改善」、「パーキンソン症候群」に対し使用されていた薬であり、副作用や耐性株の問題から、小児科領域で積極的に処方する医師はまだそれほど多くないようです。外来で患児の母親に「パーキンソン病の治療薬で、インフルエンザに効く新薬がありますが、使いますか?」と聞いても、「やめておきます」という答えがかえってきました。

さて、シンメトレルの新しい添付文章に注目してみましょう。副作用の項目には悪性症候群視力低下を伴うびまん性表在性角膜炎、角膜上皮浮腫様症状、心不全等と並んでいます(2

この悪性症候群については、森田昌代らが1996年6月の日本神経学会関東地方会で、塩酸アマンタジンとトリヘキシフェニジールを内服継続中の69歳男性が、内服開始3年後に悪性症候群を発症した報告しています。このなかで、頻度は稀少であると述べています(3

また、視力低下を伴うびまん性表在性角膜炎、角膜上皮浮腫様症状については、野垣宏らが、1992年に脳梗塞で意欲の低下を来した64歳の男性に対し、塩酸アマンタジンを投与したところ、3週間後に点状表層性角膜炎および上皮剥離を生じたと報告しています。筆者らは海外でも10数例、本邦ではこの64歳男性が始めてであると述べています(4

以上、いずれも頻度は少ないと思われます。頻度が比較的多いとされる副作用に注目してみます。添付文章には、下の表が掲載されています(2

0.1〜5%未満
0.1%未満
精神神経系

幻覚、せん妄、妄想、不安、気分効用、激越、失調、悪夢、興奮、めまい、頭痛・頭重、神経過敏、集中力障害、不随意運動(振戦など)

睡眠障害、眠気、錯乱、良く銅更新、言語障害、歩行障害の悪化、痙攀、抑欝、失見当識、躁状態

視調節障害(霧視など)

-
消化器

便秘、下痢、食欲不振、悪心・嘔吐、腹痛

-
自律神経系

口渇、立ちくらみ(起立性低血圧)

排尿障害

循環器
-

血圧低下、動悸

過敏症
-

発疹

皮膚
-

光線過敏症

肝臓

GOT,GPT,ALPの上昇

-
その他

脱力感・倦怠感、発汗

下肢浮腫、網状皮斑、胸痛、白血球減少

また、警告(1として以下の点が気になるところです。

  • インフルエンザの予防や治療に短期投与中の患者で自殺企図の報告があるので、精神障害のある患者または中枢神経系に作用する薬剤を投与中の患者では治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与すること。
  • てんかんまたはその既往歴のある患者及び痙攀素因のある患者では、発作を誘発または悪化させることがあるので、患者を注意深く観察し、異常が認められた場合には減量するなどの適切な措置を講じること。
  • 本剤には、催奇形性が疑われる症例報告があり、また、動物実験による催奇形性の報告があるので、妊婦または妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。

また、小児に対しては(1

  • 小児に対する用法および用量は確立していないので、小児に投与する場合は医師の判断において患者の状態を十分に観察した上で、用法及び用量を決定すること。
  • 低出生体重児、新生児、乳児、幼児または小児に対する安全性は確立していない(国内における使用経験が少ない)

小児科領域では武田紳江先生が、感染治療としての使用経験を発表されています。アマンタジンの投与量は3〜5mg/kg/dayの分2、最高200mgで投与期間は5日間で、症例により最高14日間投与したそうです。添付文章をみると、感染後に使用する場合、最長7日間の投与にとどめることと記載されています。この発表のなかで副作用についても触れられており、多弁、不眠を呈した6歳小児が一例(4mg/kg/day)報告されています。(5

副作用がこれだけ示されており、また場合によると、効果を示さない耐性株が48時間で発現する可能性がある(6、この薬を、もしあなたが病院で「どうしますか?」と聞かれたとき、飲んでみようと思いますか?是非意見を聞かせて下さい。 アンケート入力フォームへ

参考

  1. インフルエンザ治療と塩酸アマンタジン 'Amantadine' 28/Feb 1998
  2. 化学療法の領域:効能・効果、剤形等追加承認約一覧、シンメトレル、Vol.15,NO.1,1999 299-301
  3. 森田昌代(国療東宇都宮病院内科)、片山晃ほか:塩酸アマンタジン、トリヘキシフェニジールを内服継続中に悪性症候群を発症したパーキンソン病の一例、第137回日本史形学会関東地方会抄録
  4. 野垣宏ほか:塩酸アマンタジンによる点状表層性角膜炎および上皮剥離を生じた脳梗塞の1例、Jpn J Geriat 29:426-427,1992
  5. 武田紳江、中村 明:A型インフルエンザ流行期の塩酸アマンタジンの使用経験。第30回 日本小児感染症学会 平成10年11月6・7日抄録集:102,1998
  6. Houck P et al:Amantadine-resistant influenza A in nursing homes.Identification of a resistant virus prior to drug use.,Arch Intern Med 1995 Mar 13;155(5):533-7

10/Feb.

DPT & gelatin

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今日から、これまでゼラチンが含まれていた武田薬品の3種混合ワクチンから、ゼラチンが除去されました(1。3種混合ワクチンはBCGと並び早期に始まるワクチンです。こうしたワクチンからゼラチンが除去されることで、ゼラチンアレルギーが減ることが期待されます。

ワクチン名称
製造番号
発売日

沈降精製百日ぜきジフテリア破傷風混合ワクチン「タケダ」

HJ088Aから
99年2月10日

沈降ジフテリア破傷風混合トキソイド「タケダ」

HJ039Aから
98年12月21日

沈降破傷風トキソイド「タケダ」

HJ130Aから
98年12月21日

参考

  1. 「接種上の注意」改訂のお知らせ(1998-No.12):武田薬品工業株式会社

6/Feb.

Polio virus

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保健医療局結核感染症課は次のようにインターネットで呼びかけています。

昭和50年から52年に生まれた方で、

  1. ポリオウイルス常在国に渡航される時
  2. お子さまがポリオワクチン接種を受ける時(受ける時期はお子さまと同期)

該当する人は再度ポリオワクチンの予防接種を受けることをお勧めします。

これは、後のサーベイランスより、一般の抗体保有率が80〜90%であるのに対し、

  • 昭和50年生まれ 56.8%
  • 昭和51年生まれ 37.0%
  • 昭和52年生まれ 63.8%

と、明らかに低下している為だとしています(1

さて、日本ではここ数年ポリオの発生を見ていません。野生株と呼ばれる、自然のポリオは残っているのでしょうか?文献的に調べますと、日本において1961年のポリオワクチンの経口摂取が開始された後には、野生株での灰白髄炎は1995年まで3例のみです(2

  • 1963年 Type1
  • 1971年 Type3、秋田県
  • 1980年 Type1

定型ポリオに至らずとも、分離された株みても散見するのみです。

1981年

成田空港の航空機汚水より分離(4

1984年

愛知県で、encephalomyelitisの患者から分離

1990年

Type3、予防接種後4日後に上気道炎症状を認め、6日後下痢、12日後発熱、17日後、掴まり立ちが出来なくなった。便よりワクチン株と野生株が検出されている。(3

1993年

滋賀県で、13歳の上気道炎を示した男児の咽頭拭い液から(2

一番最近の1993年の滋賀県の例は、PCRにて詳しくウイルス株が分析され、このウイルスがワクチン株であるsabin株とは類似性が乏しく、北ベトナムで1992年に分離された株に類似していることが証明されました。この男児は発熱の19日前、台湾に3日間旅行しており、この旅行でウイルスが持ち込まれた可能性が高いと結論づけられています。 (2

それでは、ポリオ流行地域に旅行しなければ、安心なのでしょうか。言い換えれば、現在行われているポリオ生ワクチンからの感染は無いのでしょうか?

現在使用されているポリオ生ワクチンであるsabin株は、細胞継代を重ね野生株から弱毒変異株として選ばれたので、自然感染と同様な機序で抗体を産生し、腸管局所免疫も成立し、効果が優れているという特性を持ちます。

しかし、接種された人の消化管の中でワクチンウイルス株が繁殖を繰り返し、人から人への感染を繰り返す間に、毒力復帰の方向に変異を起こし、きわめて希でありますが、弱毒経口生ワクチン服用者または、その家族などの接触者に麻痺性ポリオが発生する問題、ワクチン関連症があると指摘されています。(5

原 稔らは、免疫不全の小児にそれとは知れず、接種されたポリオの生ワクチンが結果的にポリオを発症せしめたことに注目し、仔細に報告しています。(6

この児は、生後5ヶ月時に接種された生ワクチンが、その後1年11ヶ月にわたり糞便中に排泄されていたことが確認されています。2年5ヶ月後に定型ポリオに罹患してしまいましたが、その間に分離された22株のウイルス株には時間と共に連続的に変化し、毒性を持ったと結論しています。

それでは、普通の人が、この毒力復帰の可能性を持つ生ワクチンに感染する可能性が有るのでしょうか?

多ケ谷勇は人体通過後のワクチン由来ウイルスが免疫を持っていない周囲の人に感染した場合、むしろ周囲に人にとり免疫賦活といういみで有利に働くという意見が、米国で主流をしめているとしています(7。このことは裏返せば、定型ポリオの発症はなくとも、感染はあり得るといってるわけです。

前田太郎他は、ポリオ生ワクチンの接種期間中に下痢を主訴として来院した11名の患児の便をウイルス培養した結果、2名よりポリオ生ワクチン株と同じウイルスを検出し、PCR法で確認したと報告しています(8

1996年11月のポリオワクチン集団接種(11月5日〜6日)より2週間の間に、外来を訪れた,この時期にポリオ接種を受けていない、下痢を主訴とする患児のうち、承諾の得られた11人より便を採取し、以下の2症例からポリオウイルスを分離した。

症例1

11か月女児、水様便、悪心、3から4日で軽快している、神経合併症なし

症例2

1歳6か月女児、軟便、一般状態良好、3日程度で軽快。一度のみポリオワクチン接種を経験、神経合併症なし

このように、人から人へのポリオワクチン株の感染は、予想以上に高頻度に起こっていると予想されます。

毒力復帰した生ワクチンで感染した報告に注目すると、我が国で、1970年から1977年までの7年間で、生ワクチン接種者との接触で、急性灰白髄炎を発症したと考えられるワクチン関連症は8例あるそうです。(7この数字は、米国と比べると明らかに低く、日本の方が全年齢層の国民に80%〜90%の免疫を取得している(1為だろうと結論づけています。(7

これまで、米国と違い日本では、大人への感染は無いとされていました。しかし、最近の報告を探すと、1993年に内田真紀子らが19歳男性例を発表し、大人への感染もあり得ると言うことが示されています。(9

1993年 に昭和49年生まれの19歳の男性が、3日間の発熱のあと、高度の両下肢脱力が出現し歩行困難となり、無菌性髄膜炎を呈し、便よりポリオワクチン3型株が検出された。

結論としては

  1. ポリオの予防接種が行われている以上、免疫が低ければ感染する可能性は否定できず、きわめて希ではあるが定型ポリオを発症する危険性があるということ。
  2. ポリオの予防接種を行った本人が定型ポリオを発症する危険性は、500万接種に一人ときわめて希で、ワクチン関連症の頻度の400万接種に一人よりも若干低い(1。(ほとんどかわりませんが)
  3. 日本国内でポリオはほぼ根絶状態にあるといますが、インドなどポリオ多発地帯(1からの輸入は今後もあるだろうし、野生株に感染した場合200人から1000人に一人の高率に定型ポリオを呈する危険性があります(1、(9。
  4. さらに、医療関係者(新卒の看護婦さんたちは昭和51年前後の生まれですね)や保母さんなど、子どもを触れる立場にいる人たちは、予防接種を受け直すことをお勧めします

文献

  1. 厚生省:昭和50年から昭和52年生まれの方々に対するポリオ予防接種について。
  2. Tetsuo Yoneyama et al,Characterization of A Wild Polio virus Type 3 Isolated Japan In 1993,Jpn. J. Med. Sci. Biol.,48,61-70,1995
  3. ポリオ生ワクチン後左下肢弛緩性麻痺をきたした一症例、大阪市勤務医師会研究年報22号、227-228、1994.3
  4. 甲原照子ほか、輸入エンテロウイルスの調査研究、国際線航空機汚水からのウイルス分離、臨床とウイルス、13(1):97-101,1985
  5. 小松俊彦、ウイルス感染症-ポリオ-、臨床と微生物、Vol.16、No.6、1989.11、674-678
  6. 原 稔、他、ポリオウイルス生ワクチン株の問題点、臨床とウイルス;10;183-187、1982
  7. 多ケ谷勇、ポリオの免疫からみた現状と今後の問題、臨床とウイルス、59−64、1978
  8. 前田太郎他、ポリオ生ワクチン接種期間におけるワクチン株ウイルスの感染症例、小児科診療、1997年10号、1697−1699
  9. 内田真紀子、蜂須賀研二ほか、ワクチン株ポリオ3型ウイルスにより発症した急性灰白髄炎の一症例、リハビリテーション医学 Vol.33 No.5 ,326-329,1996

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Written/Edited by Y.Yamamoto M.D.

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