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ここのところ、外来に来るインフルエンザ様疾患の患児の母親に、「インフルエンザワクチンをしましたか?」と聞いても、10人中10人が「していません」と答えます。 そこで、このページでは、ここのところ連続してワクチン以外のインフルエンザ対抗手段を取り上げてきましたが、基本的にはワクチンが一番効果的であると感じています。 流行期に突入して気になることが一つあります。それは、去年の内にインフルエンザワクチン接種を勧めた患児が、時期を逃し流行期にワクチン接種を希望したところ、「2週間から4週間の間隔をあけて2回接種する必要があるので、間に合わないよ」と言われて接種を断念したというのです。 さて、日本で商業ベースで行われているインフルエンザワクチンは不活化ワクチンです。不活化ワクチンは原則として2回以上の接種で防御力が有効値まで上昇するとされています。1994年に中止された学童の集団接種では2回の接種が行われてきたわけです。 それでは、成人ではいかがな物でしょうか。堀江正知らは1996年に健康な20歳から60歳までの成人71人を対象としてインフルエンザワクチンの1回接種法を試み、1回の接種でも有効な免疫上昇を得たとしています。(1これは、平均37.3歳の健康な労働者71人を対象として、1回接種と2回接種を比較し、1回接種でも抗体価が防御に有効とする128倍を越え、1回接種と2回接種の間に、有意な抗体価の差を認めなかったとする内容です。 インフルエンザ抗体価が高いから必ずインフルエンザにかからないのかと疑問を持つ方がいらっしゃると思います。確かにインフルエンザの抗体価の測定は毎年抗原性が変化するため測定法も変更になるもので、野生株の抗体価と、商業ベースのインフルエンザ抗体価の測定結果が必ずしも一致するとは言えません。しかし、インフルエンザウイルスが抗原連続変異をおこすと仮定するなら、ある程度有効だと思われます。 今年のインフルエンザワクチン株は前にもお知らせしたように、中身の差し替えのあった株はシドニー/5/97(H3N2)で、前シーズンに流行した武漢/359/95(H3N2)(2からは抗体連続変異(Antigenic Drift)した株です。年齢別にみると20歳〜60歳で抗体価が低く(3、この年齢においてインフルエンザ予防接種を1回でも良いので接種することは有効と考えます。小児科領域では、インフルエンザに初めて暴露する児も含まれてると考えられますので、これまで通り2回接種が原則です。
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漢方に詳しい方から、小柴胡湯のアーティクルに対しメールを頂ました。内容を若干訂正し、付け加えたいと思います。
以上から考えると、予防としては小青竜湯を、感染早期には小柴胡湯が薬局で手に入りやすい漢方薬なのかもしれません。もちろん病院には行きましょうね。 |
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漢方薬の続編は後日にしましょう。インフルエンザが猛威を振るい、どこの医療機関も患者さんであふれています。しかし、外来で去年認可になった抗インフルエンザ薬が一向に処方されず、「なぜ」とお思いのかたの多いと思います。Amantadineの薬剤耐性についての関連記事をひとつ。
アマンタジンを先にインフルエンザに対し使用していた米国では、耐性ウイルスが大変問題になっています。こういった中、使用には慎重にならざるおえないのが現実です。 |
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友人からの電子メールで、in vitroにおいて小柴胡湯がインフルエンザに対して有効であるという報告があると聞きました。 インフルエンザは感染力が強く、初めは上気道で増殖を開始します。それが徐々に血行へ入り、ウイルス血症を引き起こすと考えられます(1。発熱など強い症状が出る前に、上気道での増殖を防ぐことはインフルエンザ対策の第一歩でしょう。上気道免疫がIgA抗体のみに依存するとは言えませんが(1、小柴胡湯がIgAの産生をうながし、これは小青竜湯であると指摘されました。訂正いたします。インフルエンザの予防に有効であるというのです。 小柴胡湯の生薬成分は、柴胡、半夏、黄ゴン、大ゾウ、甘草、人参、生姜の7種類で構成されています。以前から小柴胡湯には免疫調節能が存在すると言われていました。免疫調節能は柴胡が担っているとされていましが、最近の研究で甘草および黄ゴンに強いIL-1β誘導能があると判ってきました。さらに小柴胡湯には末梢血単核球に対しての、tumor necrosis factor-α(TNF-α)、granurocyte-colonay stimulating factor(G-CSF)等のサイトカインを誘導する能力があることが確かめられています(2。 それでは実際に、治療域の投与量で有効な効果が得られるのでしょうか。文献によると、70歳以上の老人の例ではありますが、丁宗鉄らは260人を対象とした調査で、インフルエンザ予防注射と漢方薬の影響をしらべ、無作為抽出で選ばれた小柴胡湯服用群は有意にインフルエンザ抗体価が上昇したという報告をしました(3。また小児科領域では、阿部勝利は昭和57年11月から58年3月にかけて小柴胡湯を服用していた24人を対象にインフルエンザ様疾患に罹患したかどうか調査し、5名が罹患しましたが、同時期に近隣の学童に対するアンケート調査を行い、インフルエンザ様疾患の発生率を比較したところ、有意に発生が少なかったと報告しています(4。 漢方薬は医師の処方箋がなくても薬局で購入することができます。ただし、小柴胡湯を内服し、間質性肺炎を引き起こしたという報告が2年間で138例あり、死亡例も16例あることは無視できません(5。その作用機序から、予防注射に取って代わる能力も持たないと考えられます。しかし、予防注射が間に合わず、まだインフルエンザにかかっていない場合、一つの選択枝に加えても良いのかもしれません。
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予防注射の副作用の例です。予防注射の中でももっとも副作用の頻度が高いものの一つ、「麻しんワクチン」について、その添付文章を見てみましょう。
この表ははしかの予防注射の添付文章から、抜き出して表にしたものです(1。武田薬品の製品を参考にしましたが、メーカによる差は殆どありません。このワクチンはゼラチンに対して対策済みで、ゼラチンが含まれていません。メーカーによる違いは、今後このページで触れていきたいと思います。さて、この100万人に一人程度という頻度ですが、去年の年末ジャンボ宝くじでたとえると、一人10枚購入したとして100万人あたり3人程度の人が一等6000万円を当てます(2。もしあなたが年末ジャンボを3枚だけ購入して、1等賞を当てたことがあるのなら、予防注射はやめたほうがいいかもしれません。
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ゼラチンだけを悪者にするわけではありません。しかし、研究者の中にはプリオン病であるCJDの感染の危険性を指摘している人もいます。(1アナフィラキシーショックに関しては、前もってゼラチンに対しての特異的IgEを調べることが商業ベースで可能となっているので、心配な場合前もって調べられます。文献1では、アナフィラキシー症例の100%が特異的IgE陽性例としていますが、自験例では特異的IgE陰性例がありますので、完璧とはいえないこもしれません。 麻疹ワクチンをみると、ゼラチンを取り去った製品も有りますが、その代わりにアルブミンが添加されているものもあります。アルブミンも献血由来であることから、未知の感染症を完全に否定することは出来ないわけです。
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外来で子ども達の親御さんと接していると、ワクチンを接種することに関して抵抗を持つかたが多いと感じます。私はワクチン接種に関しては賛成の立場をとっていますが、最終的に接種するかしないかの判断は両親にゆだねられています。そのために少しでも新しく、詳しい情報を伝える必要があるわけです。 さて、ワクチン接種に関して副作用はさけて通れません。副作用にもいろいろありますが、その一つゼラチンアレルギーに関しての情報です。ゼラチンはワクチンの安定剤のために極少量含まれていることがあるのですが、不幸にもゼラチンアレルギーを持っている子供達は、接種によってアナフィラキシーショックを起こす危険性が高まります。
上記のごとく多くのワクチンにゼラチンが入っています。これまで予防注射でトラブルを経験したことがある人は主治医と相談してみて下さい。 |
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寒さが厳しくなり、子ども達の間では「嘔吐症」の流行の兆しがあるようです。話は変わりますが、暮れも押し迫り、本日は1年を53週間とすると、50週の終わりと言えます。ここ10年間の流れを見ると(1、48週から49週にかけインフルエンザが見られ始めるようです。予防接種をお考えの方はそろそろ始めないと、接種の前にかかってしまうかもしれませんね。免疫獲得には2週間ほどかかるようです。
でも、ここで問題のはワクチン株と今年の流行が一致するかどうかということでしょう。今年初めてインフルエンザを経験する1歳以下の乳幼児にとっては重大問題です。1997〜1998シーズンの流行株(3(代表株)はというと、
最近報告された1998〜1999シーズン分離株は下のようです。
A/北京/262/95はここ数年流行がないので、抗体価が下がっており(3、少し心配ですね。B型はB/三重/1/93類似株が5年間続けて流行しており(3 (6、ここにきて今年のワクチンからはずされたB/広東/05/94類似株が出てきているのは注目点かもしれません。
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新生児医療が20年間に大変発達し、今まで助からなかった小さな赤ちゃん達が助かるようになりました。しかし「助かる」の質、すなわち「生存する」ではなく「障害なく元気に」というように要求は日々大きくなるのは常でしょう。未熟児医療の課題として、昔から慢性呼吸障害と未熟網膜症の二つは何度も問題にされてきました。 現在の日本の医療制度は「心配だから調べよう」が経済的に許されています。しかし、アメリカなどの医療先進国では医療費の締め付けが厳しく、心配だからなどとは言っていられないようです。極端な話、この病気の治療はいくらいくらで、合併症など生じるとその分病院からの持ち出しで治療に当たれと言うことがあるそうです。そうすると医師も質が要求されて良いというはなしがありますが・・でも、闇雲に早めに退院させられたり、お金がないと「最高の治療」を受けられないなどの害悪も問題になっています。下は未熟網膜症のスクリーニング対象を何週、何グラムにすればよいか調べたスタディで、新しく決まった基準は少し「ケチりすぎ」だから気をつけようという内容です。
未熟児網膜症のスクリーニング基準の疑問(本文翻訳バージョン)
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Medical Tribune日本語版の最新号に新しいインフルエンザ治療薬が2つ紹介されていました。GS4104については残念ながら小児例の報告は無いようですが、2つの施設から600人前後の治験の結果が報告され、その罹患期間を30%、症状の強さを40%軽減すると報告されていました。鼻腔内噴霧薬としてのZanamivirは1107例の治験で、インフルエンザ予防に対し67〜84%有効であるそうです。GS4104は来年にもFDAの承認が得られる模様であるとも書かれていました。
インフルエンザウイルスはRNAウイルスで大きさは直径100nm程度で、表面に2種類のスパイク、赤血球凝集素(Hemagglutinin:HA)とノイラミニダーゼ(Neuraminidase:NA)があります。これらはA型、B型いずれにも存在します。(1これらの新薬は、このノイラミニダーゼを阻害するというものです。リマンタジン(rimantadine)はamantadineの誘導体で、抗ウイルス活性がアマンタジンよりも優れていますが、同様の副作用や、欠点があります。(2薬剤耐性について、やはり実験室レベルでは存在すると書いてあることから、耐性菌(株)とのイタチゴッコはこれから先も続くのでしょう。
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Medical macintosh (c) 1998,1999,2000,2001,2002
Written/Edited by Y.Yamamoto M.D.
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