8月の半ばを過ぎました。なのにPowerBook G3 Series 1998、Wallstreet用CPUアップグレードカードの実物は一向に出てきません。どうして実物が無いのでしょうか。現在発表されている二つのアップグレードカードである064_MAXpower G3-PBと065_PowerLogix Blue Chip G3を比較しつつ、その問題点を探ってみましょう。
まず最初に発表されたNewerの064_MAXpower G3-PBは、ドータカード回収型のアップグレードカードです。一言にWallstreet用と言っても、その種類は多彩です。CPUクロックの違いだけではなく、搭載されるMacOS ROMの違いで、大きく2種類、メモリコントローラーの駆動周波数が66MHzのものと83MHzの2種、そしてキャッシュレス、512K、1Mバイト、またキャッシュがBGAタイプのもとそうでないものの4種と、その組み合わせは多彩です。064_MAXpower G3-PBはCPUとキャッシュの張り替えでアップグレードを行うので、キャッシュ無しのモデルは対象から外されています。
また83MHzのバスクロックの機種はキャッシュの張り替えを行わないためでしょう、キャッシュクロックが152MHzと低いままなのでせっかくのG3の性能が生かされていない商品ラインナップになっています。
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このことは、本来もっとも高い金額を支払った250/13,292/14ユーザーが458/152(CPUクロック数/キャッシュクロック数)で我慢しなくてはならず、もっともアップグレードカードの恩恵を受けるはずの233/12のキャッシュレスモデルユーザーはアップグレードの路がないという問題を抱えています*1。
その点、065_PowerLogix Blue Chip G3は平等です。全てのモデルがアップグレード対象であり、一様に064_MAXpower G3-PBよりもすぐれた500/250という性能を手に入れます。処理によってはPowerBook FW 500/14よりも処理速度がすぐれているでしょう。
これは065_PowerLogix Blue Chip G3が基板から新設計であり、MacOS ROMをユーザー自身が独自のユーティリティを使用してバックアップして使用するため、wallstreetに対して単独のモデルで対応できるという強みがあるからです。このことは手元にオリジナルカードを残しておくことが出来ること、作業が個人で行えることを意味し、ドータカードの返送中パワーブックが使用できなくなる心配や、故障時にオリジナルカードに戻すことが出来る安心感があり、他方に比べ優位です*2。
問題点は無いのでしょうか。ROMのコピーについては、PowerBookに添付されていた「日本語アップルコンピュータ・
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インク ソフトウェア使用許諾契約」の第2項、〜お客様は、バックアップの目的に限り、機械による読みとり可能な形態でアップルソフトウェアの複製物を1個に限り作成することができます。〜の部分を読む限り可能に見えます。
しかし最新の使用許諾契約を読むとそれまでファームウェアと記載されていたMacOS ROMを「ブートROMコード」と明記し、それがアップルソフトウェアであると定義した上で、第2項のバックアップ許可項目から明確に「ブートROMコードを除く」の一文が加えられています。この文章は確かに旧PowerBookに適応されるはずはありません。しかし、AppleがROMのコピーに不快感を持っていることは伺えます。
また、アップグレード後、オリジナルのドータカードが転売された場合に問題は発生するでしょう。問題が発生したとき、購入者はもちろんですが、アップグレードカードを販売したショップまで巻き込まれるのでは・・という危惧があり、販売に躊躇しているとも聞いたことがあります。それよりも発表から1ヶ月が過ぎているのに、海外を含め動作の一報はありません。
*1newer: MAXpower G3-PB
*2PowerLogix Blue Chip G3
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