モバイル用のハードディスクの容量は、日々大きくなり、性能も向上しています。回転数は5400回転を越え、容量は最大で32Gbyteと、デスクトップ用3.5インチハードディスクに迫る製品も発表されました。
しかし、性能と引き替えに回転ノイズの増大や、発熱、消費電力の増大などマイナス面も見受けられます。モバイル用ハードディスクには、デスクトップ用ハードディスクに投入された新技術だけではなく、独自技術も採用されています。その中の一つが、フィーリング悪化させていたことが判りました。
今回、「体感」を改善するため「賭」に出た前川氏と、そのためのツールである「ATATest」を御紹介いたします。
その前に、マイナスフィーリングをもたらしていた技術についてご説明しなければならないでしょう。それがAdaptive Battery Life Expander(ABLE)です。
このABLEは、非常にすぐれた省電力のためのコントロール機構です。1995年からIBMはこのABLEをモバイルハードディスクに搭載し、現在はversion3にまで至っています。
015_Conventional hard drive power managementを見てください。これは従来のハードディスクの省電力機構を図で表したものです。データのやり取りが終了した後、例えば5秒間はフルパワーでハードディスクは動きます。その後はidleモードになり、消費電力は約半分になるととも
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に、ヘッドは休憩位置まで待避します。しかしヘッドはまだディスク上にあるため40msでアクセスを再開できます。さらにアクセスが起こらず数分が経過するとstandbyモードとなり、消費電力はさらに小さくなります。このモードから復帰するのには通常1秒半から5秒というとてつもない時間が必要です。スタンバイではモーターが止まっているからです。それぞのモードに切り替わるタイミングは固定であり、融通が利かないという側面も持っています。
つぎに016_Adaptive Battery Life Expanderをご覧下さい。データアクセス終了後、速やかにFast Idleモードになっています。いままでのIdleモードに相当し、40msの比較的短い時間でデータアクセスを再開することができます。
さらにアクセスが起きず、時間が経過するとLow Power Idleモードに移行します。このモードではヘッドは傾斜のついた格納位置に収納されます。
IBMではこのヘッドの待避をHard disk drive Ramp load/unload technology*1と呼び、ハードディスクの大容量化と対ショック性能の向上を目的としていると説明しています。*2 アクセス再開まで400msを要します。
時間が経過するとStandbyモードになることは同じですが、IBMではスピンアップを含めて2秒でアクセスできるとしています。
驚くべきことにハードディスク自身が、データのアクセスパターンを解析し、パ
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フォーマンスを害することなく省電力を実現するために、これらのモードへの投入タイミングを最適化する学習能力を備えているというのです。*3
さて、東芝のMK1214GAPがユーザーの声を聞くと、たまに「スクロールする度に引っかかる感じがする」「コロンという音がして動作が休止する」「日本語入力文字を取りこぼす」「MP3が途切れる」といった声がありました。*4
性能的にすぐれているはずの東芝MKシリーズのフィーリングの悪さを指摘する声が強かったのは、期待が大きかったからなのかもしれません。PowerBook (FireWire)が発売され、デスクトップユーザーが大挙してPowerBookユーザーになった今日、IBM製のDARAシリーズでもこの「とぎれ」「カランと言う音がして、引っかかる」とフィーリングの悪さを指摘する声が出てきたのです。*5
- いろいろな問題が指摘されました。当初私は暫く操作を受け付けなくなるThermal recariblation動作がフィーリングの悪化を招いているのだと考えていました。しかし、そんな強烈な休止を指していたのではなかったのです。私を含めPowerBookユーザーの多くが「こいうものだ」と納得していた非常に小さな「引っかかり」がデスクトップでは採用されていないABLEに起因する物であったと突き止めた人がいます。
前述の前川氏はATA Managerを駆使し、
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