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1/Oct.

Accident

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東海村で悪夢のような事故が発生している模様です。一部報道が錯綜し、放射性物質が大気中にばらまかれたのか、そうでないのかはっきりしない状況が続いています。本日午後3時に事故発生近隣地域の屋内待避勧告が解除されました。このことは放射性物質の飛散という最悪の事態は避けられたと考えるべきでしょう。

政府対応の情報に一部気になる部分として、外出を控え、飲み水に注意するような報道がなされていること。このことは全て、放射線源よりの直接被爆ではなく、放射線源を体内に取り込むことによる体内被曝に注意せよととれる内容です。

そこで、自己責任のもとに、今回の事件に対し防御する方法を考えてみました。科学的根拠は薄いですが・・チェルノブイリでも後々問題になった甲状腺癌を防御する方法として、3日間イソジンを3滴ほど飲んで下さい。これはうがい用で結構です。この薬局で手に入る簡単なアイテムで甲状腺ブロック(ヨウド剤を摂取することで、自然界からのヨウドの甲状腺への取り込みを抑制します)ができます。その後も安全報道がされるまで、イソジンでうがいを続けましょう。今回のこの事故を教訓に、一つのアイデアとして記憶の片隅にでもこの「イソジン内服」をしまっておいて下さい。何もしないよりは、何か出来ることを。それと、イソジン内服ですが、うがい程度ならかまわないのですが、本格的に飲み続けると甲状腺機能異常を来す場合があります。だから闇雲に続ける前に、医師に相談しましょう。そんな事態になることがないよう願うばかりですが。

27/Aug.

ACDH

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一例報告ではありますが、小児科医としてこんな病気も鑑別診断に入れる必要があると、再認識したので載せます。

適切な病診連携によって救命し得た遅発性先天性横隔膜ヘルニアの一例
緒言

横隔膜ヘルニアの中でも、Bochdalek孔ヘルニアは、その殆どが新生児期に発症し、重篤な呼吸循環障害を呈する疾患として知られている。しかし、時には学童期あるいは成人期まで無症状で経過し、急性症状で発症する場合もある。これらをacquired congenital diaphragmatic hernia(以下ACDH)1)、または遅発性先天性横隔膜ヘルニア2)と呼んでいる。最近われわれは、腹痛で発症した遅発性先天性横隔膜ヘルニアの5歳男児を経験した。この児は某医より急性腹症の精査加療目的で当院を紹介され、上部消化管造影で確定診断を得た。手術適応有りと判断し、小児外科を擁する施設へ紹介した。当院での検査データが有効に活用され、すみやかに手術が行われ救命し得た。現在も当科外来にて経過観察中である。遅発性先天性横隔膜ヘルニアの多くは呼吸器合併症の程度は軽く、予後良好な疾患であるが、なかには死亡例も散見される。本症例は、初診医との連絡も滞りなく、手術もスムーズに行われるなど病診連携が良好に機能したことが印象に残る症例であった。

症例

症例:5歳男児

妊娠分娩歴 39週0日、3160g、Apgar 9点、正常分娩。日令5に黄疸増強し光線療法を1日受けているが、その後上昇認めていない。多呼吸、嘔吐なし。

既往歴:1歳半のときマイコプラズマ肺炎にて当科に12日間入院してる。1995年9月の胸部レントゲン写真(以下、胸部レ線)で異常は認めていない。

主訴:腹痛

現病歴:1998年12月22日 保育園で腹痛を訴え近医を受診、浣腸にて硬便の排泄があった。しかしその後も腹痛軽快せず、当科紹介となる。受診時、心窩部に圧痛を認め、腹部がやや膨隆しており、胃管挿入にて100mlの脱気があった。胸部レ線で、胸腔内に二重の胃泡を認めた。(図1)入院後は絶食とし輸液を開始した。胃管からの排液は非胆汁性で1000ml/日におよんだ。上記の治療により症状軽快し、12月25日に上部消化管造影で横隔膜ヘルニアと診断した。(図2)翌日、日本赤十字医療センターへ手術目的で転医した。転医時の胸腹部単純レ線像では、胸腔内脱出臓器は縮小し、下肺野にも含気が見られ、臨床的にも呼吸困難なく、全身状態良好であった。12月28日根治手術施行し、現在外来で経過観察中である。

手術

左上腹部横切開、腹壁筋群斜切開にて開腹。左横隔膜背側付着部をたどると、大網が横隔膜後方に入り込み、大網と共に胃は噴門部から胃体部の2/3が胸腔内に脱出していた。脾臓は腹腔内にとどまり、左腎臓も後腹膜腔に固定されていた。脱出していた胃は欠損孔の辺縁で圧迫されていた部分のみ、やや暗赤色を呈していたが、他の部分には損傷を認めなかった。Bochdalek孔は楕円形で長径は約3cm、ヘルニア嚢は認めず、横隔膜の左後側に位置し、辺縁に筋層の欠如は無かった。図3にヘルニア孔から腹腔内に還納された脱出臓器を示す。

 

図1 入院時胸部単純レントゲン写真

  

図2 上部消化管造影、正面及び側面像

図3 術中写真

a.腹腔内に引き戻された胃体、b.大網

図4 発症形態と病悩期間、レ線撮影の有無について

 

手術時期

本症例では、診断後、胃管による減圧が著効し、待期的手術が可能であった。同様に浜田ら7)も症状が軽快した15歳男児症例に対し待期的手術を施行して良好な予後を得ている。しかしながら、手術時期の遅れから不幸な転帰を辿った症例も散見される。

Wisemanら1)の集計した17例中2例は剖検で初めて診断できたとしている。また奥山ら8)は文献的考察で、過去に正常胸部レ線像を示し、その後ACDHを発症した24例のうち、生後1ヶ月半以内に呼吸器症状で発症した3例が、診断の遅れから死亡していることを指摘している。また、中にはすぐに診断確定し、緊急手術したにもかかわらず、死亡した例もある。関根ら9)は、前日より嘔吐があり、診察中に意識障害となった2歳7ヶ月男児が、緊急手術の甲斐なく、脳浮腫、DICで永眠したことを報告し、ACDHが生命予後良好な疾患であるが、稀に急速に不幸な転帰を辿ることもあると警告している。したがって、確定診断がつきしだい、速やかに手術をすることが望ましく、本症例も他施設での手術施行となったが、当院での術前検査結果を有効に利用し、時間的節約が出来たことが印象に残った。

考察

Wisemanらは1)、肺の形成不全の度合いから先天性横隔膜ヘルニアを3系に分け、生直後は特に問題なく経過し、後に発症するACDHを加え分類した。また、西岡ら2)は過去に偶然胸部レ線を撮影し所見無く、後に横隔膜ヘルニアを発症した男児例を遅発性先天性横隔膜ヘルニアと呼んだ。Bermanら3)は、その発生頻度は横隔膜ヘルニアの5%〜25%を占めるとして、けして稀なことではないとしている。ACDHは胸部単純レ線像で診断が付く場合が多いが、新生児期発症例や、逆に成人例では診断が難しく、62%に誤診があったとする報告すらある。3)

本邦では、浜田らは4)、1973年より1985年までの成人60例について文献的に集計し、全くの無症状で偶然発見されたものが16.4%ある反面、症状が一年以上続き、診断が付かなかった例(病悩例)が32.8%あったとしている。また、三好ら5)は1973年から1981年の58例を集計し、長期病悩症例が35%あり、その中で14歳からたびたび腹痛を訴え、3年後に確定診断、手術を受けた一小児例をあげている。さらに大塚ら6)は、生後6週より体重増加不良を主訴に、胸部レ線で横隔膜の挙上を指摘されていた児が、その後も体重増加不良が遷延し、生後6ヶ月時に、啼泣時チアノ−ゼ、多呼吸が出現し、両側先天性横隔膜ヘルニアの診断で根治術を受け、予後良好な例を報告している。

図4は、過去4年間の文献より、レ線撮影時期、病悩期間、症状、手術時期をまとめたものである。

これを見ると、ACDHの診断が必ずしも難しいという印象は受けないかも知れないが、新生児期発症例にみられるような特徴的な症状に乏しく、無症状のものから呼吸器、消化器症状を呈するなど多彩であり、過去の胸部レ線像で正常な例もあることから、日常診療でACDHの存在を無視することは出来ないと考える。

 

予後

ACDHは先天性横隔膜ヘルニアと比較し、呼吸器症状は少ないか軽度であり、主に消化器症状が主体となる。barrel chestやscaphoid abdomenが著明ではなく、腸回転異常を伴わないことが多く、根治術後は合併症が無ければ患側肺の拡張や血液ガスの正常化が早いとされている。10,11)、関根ら9)は、呼吸器核医学検査にて換気血流不均衡の改善が術後1年以内に正常化したと報告している。しかし月俣らは12)術後換気血流不均等が悪化した例を報告しており、肺機能についての継続的な観察が必要である。

結語
  1. 急性腹症で発症した左ACDHの5歳男児例を経験した。
  2. 横隔膜ヘルニアに占めるACDHの割合は稀ではなく、病悩期間が長期にわたる症例も散見されることから、嘔吐や呼吸  器症状を有する小児の診察にはACDHも念頭に入れる必要  があると思われた。
  3. ACDHは一般に予後良好な疾患とされているが死亡例もあり、  確定診断後は速やかな専門医による手術施行が望ましい。したがってより緊密な医療連携が必要である。
  4. 術後も換気血流不均等が遷延することがあり、注意深い経過観察が必要であると考えられた。

 

参考

  1. Nathan E Wiseman, Roderick IM.;”Acquied” congenital Diaphragmatic Hernia.J Pediatr Surg,12:657-665,1977
  2. 西岡洋、笹嶋唯博、竹内克彦、他:遅発性先天性横隔膜ヘルニア、日小外会誌、14:1036、1978
  3. Lawrence Berman,David Sreinger,Sigmund H Ein. et al:The Late-Presenting Pediatric Bochdalek Hernia:A 20-Year Review. J Pediatr Surg,23:735-739,1988
  4. 浜田弘巳、澤谷令兒、黒田健司他:無症状で発見された成人Bochdalek孔ヘルニア、北外誌、32:58-61,1987
  5. 三好新一郎、門田康正、中原数也、他:成人Bochdalek孔ヘルニア−3自験例と本邦報告58例の検討−、日胸外会誌 31:10 1587-1593,1983
  6. 大塚恭寛、川村健児、栗山裕、他:両側先天性横隔膜ヘルニアの1例、日小外会誌 33:6 1016-1020,1997
  7. 浜田弘巳、他:乳児期以降に発症したBochdalekヘルニアの2例、日臨外会誌 58:増刊 601,1997
  8. 奥山宏臣、窪田昭男、井村賢治、他:乳児期以降に発症した先天性横隔膜ヘルニア18例の検討、日小外会誌 25:1 51-57 1989
  9. 関根徹、中嶋英彦、梅原実、他:遅発性横隔膜ヘルニアの4例、日小呼会誌 8:1 91,1997
  10. 小林誠人、清水法男、広岡保明、他:遅発性Bochdalekヘルニアの2例、小児外科 28:1 121-124,1996
  11. 松岡四郎、鈴木則夫、倉繁徹昭、他:血性乳糜胸水を伴った遅発性先天性横隔膜ヘルニア、小児外科 20:5 659-663,1988
  12. 月俣さゆりエレーナ、伊藤真樹、近藤信哉、他:5歳時に発見された、右ボホダレック孔ヘルニアの一例、日小呼会誌 6:1 66,1995
  13. 浜田弘巳、上田拓実、三國聡、他:15歳で診断、治療された先天性横隔膜ヘルニアの一例、日小外会誌 32:4 746,1996
  14. 大浦裕之、近藤丘、岩淵悟、他:成人型Bochdalek孔ヘルニアの2治験例、胸部外科 49:5 420-423,1996
  15. 大橋明、吉田茂、三舛信一郎、他:遅発性横隔膜ヘルニアの2例、日小会誌 101:12 1715,1997
  16. 古田繁行、中田幸之介、脇坂宗親、他:遅発性Bochdalekヘルニアの1例、日小外会誌 34:2 368,1998
  17. 森山悟、佐々木信義、角岡秀彦、他:生後7ヶ月に初発した先天性左横隔膜ヘルニアの1例、日小外会誌 34:3 675,1998
  18. 呉成徹、出口英一、柳原潤、他:閉鎖性黄疸を合併した乳児右横隔膜ヘルニアの1例、小児外科 28:4 513-515,1996

13/Jul.

1154

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1154という数字は何でしょうか。これは本日の東京新聞の朝刊のトップに大きく書かれていました。

今年1月、2月の日本でのインフルエンザを原因とする死者の正式発表数です(1

この数字は前年の同時期の約2倍です。インフルエンザをただの風邪で片づけることが出来ないのは自明です。インフルエンザに対抗するには、まず予防です。予防注射の適切な時期は11月上旬から中旬だと私は考えます。例年、最初に一家の長である父親や母親がインフルエンザに罹患し、ウイルスを家に持って帰ります、そして子どもや老人に伝染するのです。まずあなた本人が予防を、子ども達をウイルスの大量暴露から守って下さい。それから、重症化するおそれのある小児、老人に予防接種を勧めて下さい。

接種開始の時期ですが、あまり早くても不適切です。抗体価は徐々に低下します。インフルエンザが収束するのは3月末。したがって効果的な接種時期を逃してはなりません。

これは不活化ワクチンであるインフルエンザワクチンを2度にわたり、約2週から3週の間隔で接種するとして、2度目のワクチン接種でブーストされたインフルエンザワクチンが十分な効果を示すのに約1ヶ月前の接種が必要と考えるからです。約2週間で有効な抗体が産生されるという考えが示されています。小児の初回接種と仮定する場合、2度目の接種から2週間後、初回接種から4週間ぐらいから有効域であるという仮定のもとに話を進めます。去年の12月、実際に私たちが初めてインフルエンザウイルスを分離したのは、12月14日(2でした。

全国のここ10年間の報告を見ると(3、48週から49週にかけインフルエンザウイルスの分離が立ち上がっています。今年で言えば11月29日から12月12日がタイムリミットということです。さかのぼること4週、11月上旬から中旬にかけて接種を開始する必要があると考えます。また健康な成人に限って言えば一回接種も、けしてムダではありません(4。是非この時期に一度でも良いですから接種を受けることを考えて下さい。もちろん2度接種できる人は2度受けて下さい。2回と言う回数に抵抗がある人は、1度でも受けた方が全然受けないよりも良いという意味です。

完全な予防は期待してはいけません、他の予防策をとりつつ、軽症化を期待して接種を受けて下さい。以前、私はある一人の喘息の子どもの主治医を勤めていました。今年の冬、その子がインフルエンザ脳症で亡くなったと聞きとても残念でなりません。予防接種が万能とは言いません。でもムダではないはずです。

1154個の未来は帰ってきません。

参考

  1. 東京新聞、7月13日付け朝刊
  2. about 'SYMMETREL'(2)、インフルエンザ治療に対してのアマンタジンの使用に関しての意見 10/Mar 1999
  3. 感染症情報センター過去10年間との比較グラフInfluenza cases reported per sentinel weekly
  4. 堀江正知、菅谷憲生ほか:成人における不活化インフルエンザワクチン一回接種法の有効性について、感染症学会雑誌、第72巻、第5号482-486
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Medical macintosh (c) 1998,1999,2000,2001,2002

Written/Edited by Y.Yamamoto M.D.

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