これまで専用の取り込みボード、高速RAIDシステム、マルチプロセッサなどのハードウェア資源を必要としたデジタルノンリニア編集も、最近のハードウェアの進歩と、iMovie 1.0.2(E)の無料配布、FireWireの標準装備で身近になりました。
PowerBookでDTVを行うことをテーマにしたHATA氏のPowerBook DTVでは日々活発な情報交換が行われています。最新のPowerBook (FireWire)を利用したDTVが十分実用的であることを物語っているのでしょう。
しかし、100MHzのメモリバス、2×AGPの採用、最高500MHzのクロック周波数などWallstreetと比較すると2倍近いパフォーマンスアップが計られたPowerBook (FireWire)ではなく、PowerBook G3 Series 1998や1999でどの程度のことが出来るのかは気になるところです。
今回は私のPowerBook G3 300(333改)/14という、今となっては遅い部類のPowerBookを024_FireWire 2 Goと組み合わせ、DVフォーマットの編集の実際をみてみることにします。
ただ切って繋ぐだけならiMovieが非常に簡単で、トランザクションを設定するとバックグラウンドでレンダリングするなど完成度は高いのですが、文章で御紹介するよりも実際にダウンロードしていただいて、ご自分で試していただけば、一目瞭然である
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ので今回は取り上げません。それとiMovieにはレイアーのモーションパスを指定できないという機能制限があるからです。
学会発表のビデオセッションや、プロモーションビデオの作成で、スチル画像を含む多重レイヤーを自由にスライドさせたり、ズームしたりと動きを与える場合はモーションパスを利用することになります。Orange LinkのFireWire CardBus Cardに付属していたPremiere 5.1LEでも機能制限で削除されていた機能です*1。
025_Adobe Premiere 5.1cはDVカムからの取り込み、編集、カット間のトランザクションなど基本的な機能を有しています。問題のモーションパス設定は、別画面で設定することになります。インターフェースは直感的とは言えず、他のプログラムと比較するとスライダーで調節しなければならない部分が大きいのですが、そこは非常に小さなプレビュー画面ながらも動きをアニメーションで繰り返し表示し、変更がすぐに反映するようになっています。
動きは軽くWallstreetでも十分実用的でした。動きが直線的であること、レンダリングをしなければ、他のレイアーとの関連がプレビューできないという使いにくさもありますが、ソフト全体が処理速度が遅い機種でも十分実用になる配慮が見られ、快適な編集作業が可能でした。
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026_Adobe After Effects 4.1はそれ単体では取り込み作業が出来ません。例えばPremiereで取り込んだビデオクリップや、静止画像を加工することになります。ただ、取り込み作業をiMovieで行い、その他の作業をAfter Effectsで行うということも可能でしょう。
モーションパスの設定方法は非常に直感的です。プレビュー画面のフレームをつかみ、回転、拡大、移動を行い、細かい設定が可能なタイムレイアウト画面をクリックすると、キーフレームが設定されます。プレビュー上のパスをドラッグすればペジェ曲線を利用できるだけでなく、タイムレイアウト画面上の移動率を示すグラフ自体もペジェ曲線を使ったコントロールが可能です。動きに対して自然な画像を得るためのモーションブラーも、作品全体でのシャッタースピードを設定するということで正確なシュミレーションが可能です。
速度的には4段階以上のプレビュー画質を設定できること、可能な限りの早さでプレビューを作成することで、編集作業のストレスが減らされています。しかし、例えばシアーなどのフィルターを一つ付加しただけで、リアルタイムプレビューは使いものにならず、RAMプレビューを用いたりレンダリをしなくては雰囲気がつかめません。
全体的には遅いPowerBookでも作業のストレスを減らす工夫が見られましたが、
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単体での動作を考えていない部分、時とするとコントロール出来る部分が多すぎて煩雑になってしまう傾向もあることは考える必要が有るかも知れません。
027_Final Cut Pro 1.2Jは夢のあるソフトです。アイテムをドラッグすると半透明のアイコンが出現し、ドロップする場所の違いで挿入なのか、置き換えなのか、はたまたトランザクションをつけるのかが選べる新しいインターフェースを取り入れています。今回のテーマであるモーションパスに関してもフレームを回転させ、動かした後、キーフレームにするアイコンをクリックするだけでモーションパスが作成出来るし、モーションパスにマウスを持っていけば、ベジェ曲線のコントロールアンカーが出現するという仕掛けです。
有るべき場所に有り、動くべき様に動くというインターフェースを備えており、直感的なオペレーションが可能です。しかし、それと引き替えに相当なマシンパワーが必要なことも見逃すことは出来ないでしょう。時間軸の移動を行うとワイヤーフレームのみがリアルタイムに移動し、動きを休めるとワンショットだけレンダリングを
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する様になっていますので、全体像はつかめるかもしれません。
しかし、プレビューするのにレンダリングが必要で、ドラフト指定してもPowerBook G3 300/14ではずいぶんと待たされます。操作性が良い反面、プレビュー用の画面も最初から広く、格好は良いのですがPowerMac G4 400当たりで操作する爽快感はなく、ストレスがたまります。アプリケーションが要求するマシンパワーが明らかに前の二つのものより高く、PowerBook G3 Series 1998や1999での快適なオペレーションは無理であると言わなくてはならないでしょう。*4
Final Cut ProはG4のVelocity Engine*2に対応しているとされ*3、今後PowerBookにVelocity Engineが搭載されればさらなる高速化が見込まれるでしょう。
代表的な3つのアプリケーションを取り上げてみました。旧型機で使用する場合、必ずしも最新のソフトウェアが良いということは有りません。歴史がある古いソフトウェアは、遅い機種でもストレス無く動く様に設計され、最新式のソフト |
ウェアはハードウェアの要求も高いと思わなくてはならないでしょう。今回印象的だったのはAfter Effectsが高性能の割に動作が軽快だったことでしょうか。
*1もう一つのFireWire PC Card
*2PowerMacintosh G4のArchitecture
*3Final Cut Pro(PDF)
*4PowerBook DTVのHATA氏より早速ご指摘を頂ましました。Final Cut Proのプレビュー用レンダリングは何種類かプリセットされており、その一つ一つについて時間軸の間引き程度、画質のサイズ、フィルターやモーションブラーのレンダリングの有無を編集できるようになっています。マシンパワーに合わせ、最適値を選択できます。が、相当画質に妥協しても待ち時間はそれなりに覚悟する必要があります。
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