いろいろな誘因、たとえばショック、外傷、敗血症などの重傷感染症、誤嚥、溺水、夕毒ガスの吸入など、播種性血管内凝固症候群などのストレスがあると、これらに対する生態の防御反応がかえって働きすぎてARDSが引き起こされるとされています。
以前は肺炎などという病名でかたずけられていた、死に至るケースも多く存在したのかも知れません。小児科領域でもその早期治療に関して最近とくに関心が集まっています。
病態生理
身体に対する侵襲
ショック、外傷、重傷感染症、誤嚥、有毒ガス、DIC、糖尿病性ケドアシドーシス、尿毒症など
|
血漿成分が滲出、肺間質や肺胞内部にそれらが貯溜して肺水腫を形成
|
肺胞換気面積の低下
|
サーファクタントの活性の低下、産生低下がもたらす肺胞の虚脱
|
伊藤真樹:成人呼吸頻拍症候群、小児内科1996 Vol28増刊号597−601
臨床症状
injury phase
|
最高6時間持続
|
肺に障害がおこり、数時間の潜伏期間にはいる。原因となる疾患、病態でとくに肺障害がなければ無症状である。胸部XPでもとくに変化を認めない
|
apparent stability
|
6〜48時間持続
|
多呼吸などの軽度の呼吸困難、咳嗽、発熱などの症状が出現し、動脈血酸素分圧の低下が始まる。この時期は肺胞過換気のため動脈血炭酸ガス分圧は低下することがある。徐々に投与する酸素の濃度を増やす必要が出てくる。場合によりARDSが疑われる。
|
respiratory insufficiency phase
|
12〜24時間持続
|
呼吸困難が著明となり、投与酸素濃度を増加しても低酸素血症が改善しない。ARDSの診断は通常この時期にくださることが多い。肺のコンプライアンスは極端に低下し、肺内シャント、換気血流不均等分布のため呼吸不全が進行。多くの患者で人工呼吸器の装着が必要となる。
|
terminal stage
|
|
改善傾向のみられない症例では慢性肺病変が進行し、コンプライアンスの低下、生理学的死腔の増加が進行し炭酸ガスの貯溜が進行する。なかには数日から数ヶ月の経過を推移して生存する場合と、合併症、呼吸不全などで死亡する場合とに別れる。
|
Balk R,et al: The adult respiratory distress syndrome,Med Clin North Am 67:685-699,1983
伊藤真樹:成人呼吸頻拍症候群、小児内科1996 Vol28増刊号597−601
診断基準
-
身体に対する侵襲が以前に存在すること
-
肺(誤嚥、重症肺炎、肺挫傷)
-
肺外(ショック、多臓器障害など)
|
-
除外疾患
-
慢性肺疾患
-
左心不全(肺動脈楔入圧が12cmH20以下)
|
|
|
|
Petty TL,et al:Another look at ARDS. Chest 82:98-104,1982
伊藤真樹:成人呼吸頻拍症候群、小児内科1996 Vol28増刊号597−601
|